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展示会や見本市への出展は一から準備をするとなると作業量がとても多くなり、担当者の大きな負担となります。

 

それが初出展ともなると、まず第一回目で大成功というのはかなりハードルが高くなります。

しかし長期的戦略の上での展示会出展は大きな効果を見込めるので、そのために出展準備のポイントをしっかりと押さえておきましょう。

 

 

展示会出展の準備で基本となる6つのポイント

完結に述べるとこの6つのポイントは「①目的」「②展示会分析」「③コンセプトとベネフィット」「④運営体制」「⑤スケジュール」「⑥コスト」になります。

各ポイントの中にはより細分化された項目が入ることにはなりますが、まずはこれらをひとつひとつクリアにしていきましょう。

 

 

①目的 ー展示会出展でどのような利益を得たいのかー

ここの目的は展示会出展の企画書でも真っ先に取り組む最も重要な項目で、展示会出展の目指すべきゴールでもあります。

しかし、展示会出展の目的は展示会のみで完結するものではなく、会期前後にも続く中長期的な企業戦略の中の達成すべき目標のひとつであるということを念頭に置かなければなりません。

「展示会で何かを得る」ことが目的ではなく、その得たもので将来的な収益をあげることが最終のゴールになるからです。

展示会は出展だけでも多くのコストが掛かかるため、最大限の効果を求めようと躍起になりがちですが、あくまでも過程の一部という認識を持って明確な目標を設定することが展示会のパフォーマンスを最大限に上げる要因になります。

目的の例:

・新製品・新サービスなどのPR → 販促計画の一部

・新規開拓におけるリードの獲得 → リードマネジメントの一部

・企業のプレゼンスアピール → CI・ブランディング戦略の一部

 

 

②展示会分析 ーどの展示会が最も効果を得られるのかー

BtoBの展示会はそれぞれ専門分野に特化したトレードショーとなっています。

近年はイベント分野がかなり細分化された傾向がありますが、単独開催の規模ではそれほど大きくない展示会同士が併設・同時開催という形で大規模になるパターンもあるため、展示会の公式ページなどで開催規模が全体でどのようになっているかも確認するようにしましょう。

またBtoB展示会の来場者はその専門分野の情報を獲得しようと会場に足を運んでいますので、必ず出展目的と来場者のニーズが合っているかを見極めなくてはなりません。

 

展示会自体の情報は各関連業界団体のウェブサイト、JETROが運営するJ-messeやビジネスイベント総合サイト展示会とMICE、国内展示会ポータルサイトエキスポガイドなどで検索することができます。

分析のポイント:

・公式サイトで発表されているここ数年の来場者数や出展社数、来場者層のレポート比較

・対象となる展示会にマスメディアやWebメディアがどの程度記事などで取り上げているか

・主催者の集客方法(セミナーや併設イベント、メディアPRなど)

・競合他社の出展規模やビジネスパートナー獲得の可能性

 

 

③コンセプトとベネフィット ー目的を達成するためにメインとなる素材はー

コンセプトは出展のメインコンテンツであり、後のブースデザインや運営体制にも紐付く大事なパートになります。

様々な出展目的があるので一概には言えませんが、製品やサービスの魅力を紹介、技術力やノウハウの訴求、認知度、ブランドイメージのアピールなどが一般的に該当し、ここに多くの要素を詰め込みすぎてしまうと結果的にそれを達成するためのタスクやコストも増えてしまいますので、少なくとも最優先事項の選定だけは確実に行う必要があります。

そしてメインコンテンツが決まったら、それが来場者・顧客にとってどのようなベネフィット(得られる恩恵、価値)を与えるのかを鮮明化します。

この作業は同時に出展している競合他社との差別化にもつながり、ブースに掲示するサインやキャッチコピーの原型になりますので、来場者や顧客にとって分かりやすく伝わりやすいものにしましょう。

例:コンセプト → ベネフィット

・生産効率がアップした製品 → 時間という新たな利益を生む大事な資産を得られます

・ワンストップのソリューションサービス → 面倒なシステムから開放されて辛い月曜日も気分良く迎えられます

しかし、来場者目線のベネフィット設定はとても難しい作業です。

上記で述べた通りメインコンテンツがブースデザインの基本指針ともなり、次で説明する戦略の前提ともなってきますので、どうしてもという場合はメインコンテンツの強みや特性、優位性を明確にしておきます。

 

 

④運営体制 ー会期前・会期中・会期後までが運営体制ー

展示会で得ることが出来た利益(情報、名刺、アンケートなど)をどう収益に還元するか、その体制の準備を出展前からしておかなければせっかくの出展費用が無駄になってしまいます。

そして会期中は目的となる利益を効率よく獲得するために、運営体制の策定が必要になってきます。

ここで展示会の事前計画としてやっておきたいことが、リスク対応計画です。

展示会は環境要因にとても左右されやすく、想定外のことが起こる可能性が多々あります。

例えば異常気象や交通機関の不慮で来場者の足が遠のく、同条件で展示品の輸送物が届かない、急遽運営スタッフに欠員が出る、想定以上の来場者でスタッフが混乱するなど―。

上記は例ですが、ある程度起こり得るだろうリスクには予め対応策を用意しておくことで、会期中のリスクを最小限に抑えることが出来ます。

 

大方は余裕がある事前準備で時間的解決が可能ですが、当日のポジショニング・接客対応はシミュレーションも含めて予行演習をしておくとスタッフの動きもスムーズになり、大部分の混乱は回避できます。

運営体制例:

・会期前:プロジェクト体制の策定(各種申請、主催者・業者間のコミュニケーション、準備物の手配などの役割分担)

・会期中:運営体制の策定(人員配置計画、運営フロー、リスク対応計画など)

・会期後:フォロー体制の策定(データ集計、顧客管理、顧客フォロー、課題抽出など)

 

 

⑤スケジュール ー時期ごとの優先事項の設定をしておくー

スケジュールは計画をロス無くスムーズに進めるために必要なものですが、展示会は準備に必要な物・コトが非常に多いため、タスク管理や優先事項の設定がポイントとなってきます。

スケジュール自体は展示会会期を中心にし、そこから準備期間と会期後と計画すると全体の配置がしやすくなります。

準備期間は、まず主催者に提出する申請期限をプロットし、そこから逆算的にブース装飾計画を行います。

そしてブース装飾計画との業務バランスを考え、パンフレットやノベルティなどの配布物、展示製品、展示パネルの手配、招待状の作成などを落とし込みます。

おおよその計画が落とし込めたら、時期ごとの優先事項を決定します。

例えば会期一ヶ月前は備品の手配、二ヶ月前はブース装飾の調整、三ヶ月前は集客プランの検討など、時期ごとに進捗の遅れで大幅な修正を伴う事項を優先事項として想定しておきます。

会期後のフォロースケジュールは各部署間の連携が必須になるので、各部署間の調整と目的共有が必要になります。

スケジュール項目例:

・展示物:出展品目の選定、展示パネル制作

・コンテンツ制作:映像制作、プレゼンテーション制作、キャッチコピー作成

・配布物:パンフレット作成、ノベルティの選定

・運営手配:MC・コンパニオンの手配、必要備品発注

・ブース装飾:装飾会社選定、コンペ資料作成、発注・調整期間の設定

・集客プラン:招待状作成、広告出稿計画

・運送手配:輸送・搬入出計画

・フォローアップ:集計・データ分析、営業フォロー

 

 

⑥コスト ー展示会の費用対効果は長期的戦略に基づいて算出するー

最後にコストの算出です。

展示会のコストは大きく分けて、主催者に支払う一次費用と装飾などの二次費用の2つに分けられます。

一次費用は小間数による出展費用と、電気や水道などの一次設備使用料が固定コストとして発生します。

それに対して装飾や配布物、映像の制作費用、輸送費、備品などの購入費用、交通費、宿泊費用などの二次費用はその内容によって大きく変動するコストです。

 

それらを合算したものが展示会出展費用となりますが、この出展費用の費用対効果をどう算出するかは非常に難しいところです。

なぜなら展示会期間中に出展費用そのものを回収できることはそうそうありませんし、展示会という性質上マーケティング要素が非常に高いため、即時売上の効果測定という考え方は根本的に間違っているためです。

目的の項でも述べましたが、展示会出展の目的は戦略の中のプロセスの一部で、出展目的に合った費用対効果の算出が合理的になってきます。

展示会出展におけるROI(Return On Investment)測定:

 

(収益換算合計額) − (出展費用合計額) = ROI

 

・出展費用合計 1,000,000円

・収益換算合計 1,000,000円(下記表が内訳)

この場合、(収益換算合計 1,000,000円)−(出展費用合計 1,000,000円)=ROIは0になります。

 

ROI

参照元:経済産業省 展示会産業概論 第5章

参照元の経済産業省発行の資料にもあるとおり、あくまでも算出方法の一例であり、値がマイナスになったとしても長期的戦略の視点がここでは必要になってきます。

 

 

まとめ

展示会出展準備に向けての6つのポイントをご紹介しましたが、ベースとなるのはやはり目的で、この目的がブレないことで計画中に大幅な修正を課せられたとしても最終のゴールへの軌道修正が可能になります。

必ずしもこれらすべてを準備必要はありませんが、展示会を有効活用するならば少なくとも「展示会出展」を単独計画として捉えずに、長期的戦略に組み込むことが重要になってきます。

 


 

当初の予定ではもっと簡潔にするつもりでしたが、かなり長くなってしまいましたので、読み手の方に展示会出展はとても大変な印象を与えてしまったかもしれません。

実際はこの準備作業工程を私たちのようなイベント企画・装飾会社に依頼する企業様も多くいらっしゃいます。

企画の立ち上げから、備品の手配までその依頼内容は多岐に渡りますので、ご気軽にご相談下さい。

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